2016年10月10日 東京ドーム CS第3戦 死闘 そして

ベイスターズファンになって四半世紀を過ぎましたが、これほど密度の濃い試合を生で見たのは近年に記憶がありません。
ようやくCSという表舞台にたどり着いた喜び。ドームを半分以上青く染めた思いの塊。
当時は興奮と忙しさで振り返りすらできなかったので、今、改めてその試合を振り返りたいと思い指を動かしています。


1勝1敗で迎えたCSファーストステージ第3戦。今日、勝負が決まる。
1回表に梶谷が左指に死球を食らう。内海がトリガーを引いたことによりここから死闘が始まった。梶谷が負傷交代になり関根が出てきた途端、ドームは半分以上埋まった青い軍団からもの凄いブーイング。
太々しい顔をしている内海にも間違いなく動揺があった。同じようにキャッチャーの小林にも影響を及ぼす。流石に死球退場させた直後に内角を攻めて万が一にも当ててしまってはとんでもない事態になることは容易に想像できる。それを察知してロペスは外角に的を絞っていたのだろう。しっかりと踏み込んでレフトスタンドへ大飛球を放つ。
ロペスのクレバーで熱い思いが放ったHR。チーム、ファンから見たら梶谷という大きな戦力を失った悲しみや悔しさ、読売に対する怒りを2点先制というアドバンテージ以上に気持ちで負けていないという大きなアドバンテージをもらった一打だった。


このシリーズの読売のキーマンでもある坂本に対し、気持ちで負けたくない石田は次の回に坂本の頭の上への投球。推測だがこの投球は意図的ではなく、意識的に内角を抉る考えがあったからこのような結果になったとみている。しかしこの投球が伏線となり村田阿部という中軸に被弾し同点に。


しかし一旦動揺した内海が元に戻ることはなかった。内角を抉る投球ができないため皆が踏み込んで打ってきた。もしかしたら首脳陣から内角を捨てて踏み込んで打て!という指示が出ていたのかもしれない。
その結果が関根の犠牲フライを生んだ。
梶谷の代わりの関根が機能したことで、この試合はいい勝負になるな、という予感がした。


4回裏、強気な石田の投球が村田の膝元へストレートを食らわせる。
丁度この時はトイレの行列に並んでいる時で通路のモニターで見ていた。打席の真上からのカメラに映るうずくまって倒れる村田。正直、梶谷がノックアウトされており、これでちょうどいい塩梅なのかもとも思った。しかしベンチから走って帰ってくるではないか。
心配して損した。心底そう思った。やせ我慢しているんだろうが、梶谷に比べれば試合に出れるのだから・・全然ましだろう。
その後、全力疾走で内野安打しているのだから大したことはなかったのだろう。
その村田も内角を抉られないだろうという読みもあったのだろう。足を痛めて踏み込んでこないとバッテリーは内心思っているかもしれない。そんな思いを逆手に取り、しっかりと踏み込んで変化球を救い上げてHRを放った。この打席は先日の坂本と同じくらい嫌な予感があった。
野球に限った話ではないが、流れというのは必ずあり、気を付けなければならない時は嫌な雰囲気を感じる。そこで細心の注意を払わなかったことが同点打につながったのだろう。


石田が6回途中で退いたが、大竹が7回を投げぬいたことで救援陣のやり繰りに関してはこの後読売のほうが有利に働くことが予想された。砂田が1回2/3を耐えたことで何とか後半を戦える土壌を作れたが、それがなかったらとんでもなく不利な状況で試合は進んでいただろう。目立たないがこの試合を支える大きな役割を担ったのが砂田だった。
8回表のチャンスを逃したことで流れは混沌としていた。そんな中、9回裏の村田の内野安打で流れは一気に読売に傾きかけた。
しかしこのCSの一番のハイライトかもしれないが、田中の牽制で鈴木がタッチアウトになった。1つのアウトだが鈴木が牽制アウトになるという読売からしたら何でこの場面で、というショッキングな出来事で、とてつもなく大きいアウトを取った。
この後後続を断ち、流れは横浜かと思ったがマシソンと澤村の力に抑えられて流れをこちらに持ってこれない。しかし田中も負けてはいない。しっかりと3者凡退に抑えていよいよ流れをこちらに持ってくる。
倉本が澤村の右足強襲の内野安打を放つ。またもや怪我人が発生。一度ベンチに戻ったが帰ってくるかな、と思ったが田原に継投。これで読売の計算が狂う。11回まで澤村。12回まで行った場合は最後に刀根という計算だったと考えるのが定石だろう。
そこに予定外の田原なのだから準備が出来ていなくても当然だろう。
嶺井は西武戦でのサヨナラヒットをいきなり放つように、勝負強さを持つバッター。可能性はあると信じていた。ただ、右の横手投げなのでストライクからボールになる投球を続けられたら分が悪いかなとも思っていた。しかし小林が選択したボールは外のストライクになるスライダー。それが真ん中に失投となる。明らかに準備不足が見えたが、それを逃さず強く叩いた嶺井を称賛すべきだろう。
この後の投手交代時に流れた「勇者の遺伝子」は後世に語り継がれるであろう空間だった。
「歴史と共に 今 反撃開始」
このフレーズはとても奥深く、ベイスターズを長年ずっと見てきた人には感慨深い。
負け続けた歴史に目を背けずに、全ての歴史を受け止め、全ての歴史は今から開始する反撃のためにあった。
簡単に説明するとこういった意味でこのフレーズを私は受け止めている。
そしてついにその時がやってきたのかもしれない。このとき「勇者の遺伝子」をドームで合唱しているときに感じた。
そんなことを感じながらもまだ試合は終わっていなかった。あとは康晃に託すしかない。終わったから言うわけでもないが、もし11回裏に同点に追いつかれていたら多分引き分けで終わっていた可能性が高いのではないかと思っている。それだけ戦力的にも体力的にも精神的にも横浜はギリギリで戦っていたからだ。
長らく横浜ファンを経験している人は誰でも経験している。
 土壇場において今までどれだけあり得ない負け方を経験したことか。
最後の読売のボスキャラ阿部のライトへの飛球がスタンドインするなんて光景は当たり前のように見てきた。
ここへきてそんな同じようなことが起こるのか。
いや、今年の読売はシーズン前から賭博事件に始まりヒールとして戦っているチーム。そんなドラマは起こらないと思いながらライトへ飛ぶ飛球と関根を見ていた。
関根のグラブにボールが収まったとき、私の喉は燃え尽きて嶺井のような声になっていた。
今回の1勝はシーズン中では味わえることのない1勝であり、18年ぶりにポストシーズンで真っ向から相手を倒した瞬間であり喜びも別格だった。
この薄氷の勝利は選手だけの力ではない。ドームの半分以上を青く染めたファンがいたからこそ、その後押しがあったからこそ何とか勝てたと思っている。須田がシーズン終了後に話していた。CSファイナルで広島のマウンドに立った時に足が震えていたが、ビジターパフォーマンスシートを見て投球練習をしたら震えが止まってきたと。実際にプレーはしないが、ファンという存在は後押しにはなることは間違いない。それがスポーツ観戦の醍醐味なのかもしれない。
ことしのスローガンは「This is my ERA」。これからは横浜の時代だ。
「歴史と共に 今 反撃開始」

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